衣食住から見える日本人の暮らし。中でも住が最も悲観的だと言われます。それは、今日の住まいをめぐる風景のはしばしに、市場原理に組み込まれて生きる日本人の姿が鮮明に映し出されているからでしょう。耐震強度偽装、アスベスト禍、シックハウス。これらの言葉は、住宅をもはや命とのつながりで見ることができなくなった、この国の住む文化の貧しさを象徴しています。しかも、遠大な時を重ねて蓄えられてきた住の心や地域の技術は、ますます加速する時代の流れの中でいつ消えてもおかしくありません。
デザインの果たす役割はますます重要になっています。「スロー・デザイン」とは、経済効率を最優先する社会が切り捨ててきたつながりや循環、小さなもの、つつましいもの、ローカルなものに目を向け、私たちの暮らしに本来の安らぎと美しさを取り戻すためのデザインのことです。2001年に発足したスローデザイン研究会は、環境文化NGO「ナマケモノ倶楽部」を発信源に全国的な広がりを見せるスロー・ムーブメントとも連携しながら、モノづくりを通じて、人と人、人と自然、人と地域のつながり直しと、エコロジカルで新しいライフスタイルを住の現場から創造することをめざして活動しています。

